近視はどうして起こるのか
近視の発症には遺伝的要因と環境要因の両方が関与すると考えられています。遺伝的要因とは、先祖や両親から受け継いでいる遺伝子によって生じるというもの、環境要因としては、屋外活動の減少や近業の関与が報告されています。実際は、このどちらかという厳密な判定は不可能で、両者がともに深く関係して近視になると考えられています。
遺伝的要因での近視
近視のうち、特に病的近視では多数の強度近視患者の臨床遺伝学的研究から遺伝的要因が強いと示唆されています。例えば
(1)一卵性双生児では、ほとんど同じ度数になる。
(2)近視でない両親より近視の両親から生まれた子供は、近視になる確率が高い。
などが共通して報告されており、遺伝的要因が関与することは間違いありません。
したがって両親ともに近視 > 片親だけ近視 > 両親とも近視ではないという順序で子供が近視になる確率が高いと考えられます。
遺伝子は遠い祖先から受け継がれているものですので、両親が近視でなくとも受け継いだ遺伝子の中に近視になるものが含まれています。それが、たまたま隠れていて近視になっていない可能性は十分あります(これを「近視を発現していない」といいます)。したがって強い近視の子供の場合、祖父母、曾祖父母に強度近視がいる場合がありますが、昔のことなので、よくわからないこともあります。
遺伝子解析の結果から、主に病的近視に関与する遺伝子変異が報告されていますが、今なお、決定的な遺伝子は明らかにはなっていません。つまり、ひとつの遺伝子の異常から生じる単純な遺伝病ではなく、複数の遺伝子とさらに環境因子が絡むことが非常に複雑な原因となっています。単純近視と病的近視とが同じ要因により起こるのか、両者は同一線上にある疾患なのかについても明らかではありません。今後の研究の進歩が望まれます。
環境要因での近視
人間の目は水晶体の周囲の「毛様体筋」が緊張したり、ゆるくなったりしてピントを調節します。手元よりにピントを合わせた状態が続くとその距離を見やすいように順応します。そのため、眼軸長(目の前後の長さ)が伸び眼球全体の屈折力(目の度数)が手元よりに変化することで、近視が進むと言われています。一番単純な例は読書が多い人に近視が多いという事実があります。また、親世代に比べ、今の子ども世代は明らかに近視の子が増加し、しかも若年化しています。これは遺伝的要因だけでは説明できず、環境要因が関与している重大な証拠です。
読書など近いところを見る作業は、たくさんありますが、この作業が増えることで近視になる確率が高まるのは事実です。ただ実際問題として、近視予防のために読書をしないというのは、現実的な対応とは言えません。近くを見る作業として、スマホや手元でするゲーム機などがありますが、これらが機械単体で近視の原因として特定されているわけではありません。しかし、これらの機器が登場したのが最近なので、近視の原因を科学的に立証するための研究結果が追い付いていません。また、非常に多くの対象と労力、データの中立性が必要ですので、それがなかなか難しいという点もあります。
世界共通で認識・信頼されている近視の原因は、「外遊び」の減少です。日光にあたる外遊びが少ない子供は近視になりやすいのです。したがって近視の予防には日光にあたり、外で遊ばせることが最も近道かつ確実な方法とされています。ただ、日光にあたるといってもそこでスマホやゲームなどをしていたら、全く意味がありません。実際いくつかの国では、学校の昼休みや休憩中に外で遊ぶことを義務付け、記録をつけさせているところもあります。